留学生が本気で考えた、福井県インバウンド戦略
DJ GLOBAL INTERNSHIP Co-Creation|成果レポート
外国人留学生が、自国の旅行者視点で福井県の観光誘致戦略を提案。事例
日本人には見えない「気づき」が、地方観光の未来を変える。
プログラム概要
参加大学・研究科
  • 大阪大学 大学院国際公共政策研究科
  • 立命館大学 大学院国際関係研究科 ほか
対象国
インドネシア、インド、ベトナム、韓国、シンガポール、ロシア ほか
Transcend-Learningが主催する「地方自治体インターンシップ・チャレンジプログラム」では、関西圏の大学に在籍する留学生が、福井県のインバウンド観光客増加に向けた戦略レポートを作成しました。
各留学生が自国の旅行者の目線から、ターゲット設定・観光資源の発掘・プロモーション戦略・実行プランまでを一貫して提案。日本人だけでは気づけない「宗教・食文化・旅行行動パターン・SNSプラットフォーム」の知見が凝縮されています。
なぜ「留学生の視点」が必要なのか
「中学生のころから日本の観光情報を調べていたが、福井は一度も聞いたことがなかった。」 — インドネシア出身 参加学生
この一言が、福井の国際観光における最大の課題を物語っています。日本人にとって当たり前の「福井=恐竜博物館・永平寺・越前がに」は、海外ではほぼ認知されていません。
留学生は観光客でもあり、情報発信者でもあり、母国とのブリッジ人材でもあります。彼らが持つ「当事者視点」こそが、地方観光の突破口になります。
Case 1
ハラール × ムスリムフレンドリー戦略
インドネシア出身|立命館大学 生命科学部
世界最大のイスラム教徒人口(2.7億人)を持つインドネシア市場に着目。「完全なハラール認証」がなくても、シーフード中心メニューや食材表示の工夫で「ムスリムフレンドリー」対応が十分可能であることを、ムスリムとして育った自身の経験から具体的に提案しました。
マイクロインフルエンサー活用
在日インドネシア人コミュニティをマイクロインフルエンサーとして活用する戦略を提案。
ブランディング
福井を「京都から2時間のジブリ風の隠れた観光地」と位置づけるブランディング。
季節別プロモーション
インドネシア人の旅行ピーク(6〜7月の学校休暇、12月の年末休暇)に合わせた戦略。
専用シャトルバス
敦賀市内の観光地を結ぶ専用シャトルバスの提案。インフルエンサー3名も具体的に推薦。
Case 2
データ駆動型インドネシア誘客戦略
インドネシア出身|大阪大学 大学院国際公共政策研究科(OSIPP)
「通過地点から目的地へ」をテーマに、2029年までに福井県の外国人宿泊者数を11万人→40万人(3.6倍)にする戦略を、5W1Hフレームワークで体系的に構築。
市場規模
インドネシアのアウトバウンド旅行者は年間約1,000万人。2025年に64万人が訪日。日本はインドネシア人の夢の旅行先No.1。
3つのペルソナ
若いカップル・友人グループ・ヤングファミリーの精緻なターゲット設計。
既存資源の活用
「日本海の海産物は自然にハラール要件に近い」「永平寺の精進料理は自然にハラール対応」と突破口を提示。
当事者アクション
インドネシア観光省の同僚にレポートを共有し、旅行会社への橋渡しを行うという具体的行動。
Case 3
「ベジタリアン × 禅」という唯一無二の切り口
インド出身|在学中
インド市場に特化した戦略。キャッチフレーズは「Fukui Zen & Veg Retreat — 日本唯一のベジタリアンフレンドリーな精神的旅行先」。
永平寺の精進料理が、インド人旅行者にとって自然にベジタリアン対応であるという気づきは、日本人には思いもよらない「資源の読み替え」です。ターゲットはムンバイ・デリー・バンガロールの25〜40歳・中上所得層。
  • 旅行シーズン:4〜6月(学校休暇)、10〜11月(ディワリ祭)、12月(冬休み)
  • MakeMyTrip・Ixigo・Goibiboなど実際に使われる予約プラットフォームを具体的に提示
  • インド人旅行インフルエンサー2名を推薦
  • 「京都から同じ距離なのに、より静かで混雑していない」というポジショニング
インド市場のポテンシャル
インドの人口は14億人。「ベジタリアン」×「禅」という独自の切り口で、他の誰にも出せない市場への扉を開く可能性を持ちます。
Case 4
AI × UX改善で「選ばれる観光地」に
ベトナム出身|立命館大学
福井県公式観光サイト「Discover Fukui」のユーザー体験改善と、ベトナム市場向けKOL(キーオピニオンリーダー)戦略を2本柱で提案。
UX問題の発見
Discover Fukuiサイトの検索結果1,445件・カテゴリ過多というUX問題を、外国人ユーザーとして実際に使った体験から指摘。
AI旅シミュレーター
旅行日・人数・カテゴリを入力するとAIが最適旅程を生成する「旅シミュレーター」を提案。UIモックアップまで作成。
TikTokキャンペーン転用
韓国の#HelloKorea TikTokキャンペーン(2億回再生)をベトナム市場への成功事例として紹介し、福井への転用を提案。
KOL推薦リスト
ベトナム人KOL 6名をフォロワー数つきで推薦(最大320万フォロワー)。既存リソースを活用する現実的アプローチ。
Case 5
韓国リピーター市場への精密戦略
韓国出身|立命館大学 大学院国際関係研究科
「福井は旅行ルートの一部だが、旅行の意思決定の一部ではない」
この鋭い問題定義から出発し、韓国人リピーター(年2〜3回訪日)に絞った精密なマーケティング戦略を構築しました。
キャッチコピー
「Japan, Before It Was Crowded」 — 京都の混雑に辟易した韓国人リピーターの心理を熟知した秀逸なコピー。
Fukui Stopover Campaign
福井に1泊すれば京都→福井 or 福井→金沢の電車無料。口コミで拡散する「シェアラブルトリガー」まで設計。
NAVERの重要性
「旅行の意思決定はプラットフォームで行われる、公式サイトではない」— 韓国最大検索エンジンNAVERの戦略的活用。
KPIフレームワーク
宿泊率・平均滞在日数・ルート転換率まで設計。大阪→京都→奈良の3泊目を奈良→福井に差し替えるモデルイティネラリー。
Case 6
シンガポール市場 × イベントマーケティング
シンガポール出身|立命館大学
SNSマーケティングとリアルイベント(ロードショー)の組み合わせで、シンガポール市場からの認知獲得と来訪促進を目指す二軸戦略。
  • 福井のInstagramアカウントが検索で上位に表示されないことを、福岡・シンガポールの公式アカウントと比較して課題提示
  • NATASトラベルフェア(シンガポール最大の旅行展)への出展提案
  • シンガポールの高島屋での「福井フェスティバル」2週間開催という具体的イベント企画
  • 数百万登録者のYouTuberへの個人的コネクションを活用した連携提案
市場特性
シンガポール人の高い旅行消費力と計画志向を踏まえた市場特性分析。Diploma in Integrated Events Managementの実務経験を活かした貢献。
レポートの特徴
「自分のスキル・人脈で何ができるか」を最も明確に示したレポート。提案だけでなく、実行まで視野に入れた行動力。
6つのレポートに共通する「留学生ならでは」の価値
宗教・食文化の内部知識
ハラール対応(インドネシア)、ベジタリアン対応(インド)を「完璧でなくてもOK」と示せるのは当事者だからこそ。
母国の旅行行動パターン
休暇時期(ディワリ、学校休暇等)、使用プラットフォーム(NAVER、MakeMyTrip等)— Googleでは調べきれない「生きた情報」。
具体的なインフルエンサー推薦
各国あわせて15名以上のKOL/インフルエンサーを、フォロワー数・コンテンツスタイルとともにリストアップ。すぐに実行可能。
母国政府・業界とのネットワーク
インドネシア観光省への橋渡し、シンガポール人気YouTuberへの個人的つながりなど、留学生だからこそ持つ「実行力の源泉」。
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福井県の「見えない資産」が可視化された
このプログラムを通じて明らかになったのは、福井県はすでに豊富な観光資源を持っているということ。ただし、それは日本人の目線でしか語られていなかったのです。
永平寺の精進料理
→ インド人にとってのベジタリアン聖地
日本海の海産物
→ ムスリム旅行者にとっての自然にハラール対応の食体験
混雑の少ない静けさ
→ 韓国人リピーターにとっての「混雑する前の日本」
恐竜博物館+伝統工芸
→ インドネシア人ファミリーにとってのインスタ映え+体験型ツーリズム
同じ資源でも、見る人が変われば価値が変わる。 留学生の視点は、地方観光の可能性を何倍にも広げます。
プログラム運営
一般社団法人Transcend-Learning
DJI(Diversity Jamming Initiative)
産学官共創プラットフォームDJIでは、留学生・グローバル人材と日本企業をつなぐプログラムを通じて、多文化共生社会の実現と地域活性化に取り組んでいます。

本ページに掲載されている内容は、参加学生のレポートに基づき匿名化・編集したものです。